2007年2月25日

ブルースは神秘的な音楽

ジャズの起源はブルースっていうのは通説ですが、しかしこれほどシンプルで奥の深いスタイルは珍しいと思い少し考察することにしました。

1度、4度、5度の3つのコードのみで構成した12小節の進行を延々と繰り返すブルースは、半世紀以上その原型が変わっていません。この12小節というのが共通のルールであとは曲のテーマもキーも拍子やテンポも自由です。

あるコード進行にまったく違うメロディをのせて新しい曲として発表するという手法は、ビバップ全盛期によく見られました。例えばジョージ・ガーシュインのアイ・ガット・リズムは有名で、オレオやビル・エバンスのファイブに生まれ変わっています。しかしブルースの場合は、原型となるスタンダードがありません。

そもそもブルースの起源はというと、アメリカの南北戦争時代に軍隊が捨てた楽器をアフリカ系アメリカ人が拾って1コードだけでジャムセッションを始めたところともいわれています。それが2コードになり少しずつ増えて12小節になったそうです。

シンプルさが人気の秘訣なのはもちろんですが、ハーモニーもブルースの重要な要素です。先にもあるように、1度、4度、5度の3つのコードのみで構成されているので、どのコードへの移行も音楽理論上スムーズです。また、おもしろいのは、3つのコードすべてをドミナントコードで統一していることです。

ドミナントコードとは、キーの中の5度の音をルート(根音またはベース音)にしたメジャーコードで、クラシック音楽の時代から曲の締めくくりに必要な極めて重要な和音です。特にこのコードに含まれる3度と7度はトライトーンともいい、ジャズの表現技法には欠かせない音です。ブルースのコードば3つすべてにこのトライトーンがあります。しかもこ3のトライトーンはそれぞれ半音ずつずれます。

具体的な例をあげると、キーがCのブルースでは1度がC、4度がF、5度がGですが、それぞれのトライトーンはE-Bb、Eb-A、F-Bです。この半音移動がブルースにより心地よい和音効果を与えます。

作曲家や楽器を演奏する方は経験があるかと思いますが、曲中に現れるアクシデンタル音は不協和音ですが、半音戻して解決することやにより聴き手に安心感を与えます。科学的根拠がないのが残念ですが、音楽史上繰り返されてきたセオリーです。単純にドレミファソラシ〜ときたら次は「ド」というのが西洋音楽では一般的な解釈です。半音上下して解決するのは音楽的に気持いいことなのです。
ブルースにはこの半音解決がたくさん詰まっています。先ほどのトライトーンによる移動も解決の一つですし、#9→3 b9→1 #11→5 or 3 b13→5 などドミナントコードの変化形に現れるエクステンションのほとんどが3和音の要素へ解決します。ブルースのコードがドミナントコードであることが、アドリブの自由度を高め、また可能性を広げているとも言えるでしょう。

ジャズの歴史上ルイ・アームストロングのホットファイブ時代から時が変わり、演奏が変わり、録音技術が変わった今でもブルースといえば12小節の音楽。深く考えると不思議なのですが、そんなことしなくてもいつもかっこいい音楽というのが神秘的に思えた今日この頃でした。