2007年2月13日

ジャズと人種問題

最近登録したアルバムにハービー・ハンコックのザ・プリズナーというアルバムがあるが、改めてライナーノーツを読んで驚いた。収録曲のタイトルから何らかのストーリーがあるとは思っていたが、まさかマーティン・ルーサー・キング牧師のことと、当時なかなか改善されなかった人種差別を嘆くものとは…。

しかもハービー・ハンコックの視点が第三者的であるのが素晴らしい(不適切な表現ですみません)。アフリカ系アメリカ人として、キング牧師を倒した凶弾を恨むわけでもなく、ジョン・コルトレーンのようにそのサウンドがマルコムXのような攻撃的なイメージを生むこともない。あくまでアメリカの人種問題を、当事者でありながら客観的にとらえたところがこのアルバムの意義をより重厚なものにしている。

ジャズと人種問題は切り放せない。マイルス・デイビスも若い頃の経験から人種に言及することもあるし、そういったエピソードは多々ある。ジャズピアノ研究室では、なるべくこの問題については触れないようにしてきたが、このザ・プリズナーには胸が熱くなったので本編でも多少触れさせていただいた。

地域、民族、時代、個人など様々な要素が混ざりあって世界の音楽は多様化していると思う。しかしそれは決して肌、目、髪の色によって区別されてはいけない。日本国内ではジャズに限らずスポーツなどでも人種をアイデンティティーとして用いることがあるが、国際社会の現代では見直されるべき点だと思う。